「不連続の世界」は恩田陸さんの作品である。
「月の裏側」の主人公である、あの掴みどころのない塚崎多聞がまた登場する。
「不連続の世界」は短編集であり、多聞の周りで起こる謎を解決したり、しなかったりする話だ。
話の全貌はわかっても、あえて解決しないのも多聞らしい。
あらすじ
「不連続の世界」は全5編の短編集だ。
- 木守り男
- 悪魔を憐れむ歌
- 幻影キネマ
- 砂丘ピクニック
- 夜明けのガスパール
上記のようなラインナップだ。
いずれの話も方向はバラバラだが、「夜明けのガスパール」だけは多聞に直接関係する。
木守り男
多聞が川を散歩するとたまに会う大学の先輩との話。
この話はトリックが抽象的なまま終わっていく。
想像できるが。
この手のミステリーの方がかえって怖いかもしれない。
個人的に気になったのは、大学の先輩が夢で見ると言う人生エレベーター。
階層と年齢が一致して、年を重ねるごとに上に登っていく。
細かくは書かないが、個人的にこの題材で小説を書いてみたい。
悪魔を憐れむ歌
地方のラジオ局で流れた不思議な曲。
作者不明で、流れた理由も定かでない。
この曲を聞いた者の中には、この曲が原因で死に至ったという。
曲の作者を調べていくと、とある数学の先生にたどり着く。
なんだか人間の闇の部分を見ているような気分になった。
家柄は良ければ良いが、しがらみになってしまう時もある。
幻影キネマ
多聞がプロデュースするバンドメンバーのトラウマを解決する話。
このバンドメンバーが抱えていることは誰にでも経験あるのではないか。
言えることは無意識って怖い。
砂丘ピクニック
友人の翻訳者が故人の本を上手く訳すために、本における謎を解決しにいく話。
本当に不気味なストーリーは同時並行するものだ、と感じられる。
夜明けのガスパール
多聞自身についてのミステリー。
多聞が物語の主軸になるのは初めて。
これに関しては「不連続の世界」、幻冬舎文庫のリード文を読むと良いかも。
妻と別居中の多聞を、三人の友人が「夜行列車で怪談をやりながら、さぬきうどんを食べに行く旅」に誘う。車中、多聞の携帯に何度も無言電話が……。友人は言った。「俺さ、おまえの奥さん、もうこの世にはいないと思う。おまえが殺したから。」
出典:幻冬舎文庫
これ以上のいい説明はない。
感想
恩田陸さんは本当に怪奇現象や抽象的な現象を文字で描くのが上手だと感じる。
トリックの柱がスピリチュアルであっても、あまり疑問を持たずに読み進められる。
事件の周りがどこか浮世離れしながら進んでいくからだろうか。
「不連続の世界」は塚崎多聞が再び登場するが、「月の裏側」との関連はほぼない。
続編っぽいけど続編でない。
だから「不連続の世界」だろう。